はじめに
前回の記事の続きです。
今回もゲームシナリオを悩みながら制作した過程を赤裸々に記載していきます。
記事中にはブラウザゲーム「逃げる僕たちと暗黒の森」のネタバレが多く含まれているので、ご注意ください。(とくに今回はエンディングについての内容も入ってますのでご注意を・・・!)
さて、前回はイベントシナリオがある程度揃い、テストプレイができるようになったところまでをご紹介しました。
その後、イベント数を現状の約2~3倍である30個に増やしたいというオーダーが来て、はたしてどう対応するか!? 頭がおかしくなる!!というところまで書きました。
ネタ切れ問題にどう立ち向かうか
ひとつのイベントを作るのに2~3時間掛かるので、最初に考えたのは「いかに断るか!?」ということでした。
ただ、自分でテストプレイしてても、現状の10個くらいのイベント数だとすぐにクリアできてしまうんですよね。
ある程度量を増やしたほうがゲームとしては良いんだろうなという気持ちもよく理解できたのですが・・・
いかんせん、すでにネタ切れ状態だったのです。
なぜネタ切れだったかというと・・・
今回のゲームは「兵士に追われた子供たちが森の中を逃げる」というものです。
とすると、イベントは必然的に「危険な動物と出会う」「険しい自然を乗り越える」「兵士に遭遇する」くらいのパターンなんですよね。
危険な動物が出るイベントは「野犬に囲まれる」「熊と出会う」「蜂の巣に近づく」「大蛇と遭遇する」というものをすでに書いていたので、あとは虎とかワニを出すくらいでしょうか。
(例:野犬と出会うイベント)
けれども「熊と虎とワニが同時に生息している森ってあるんだろうか」などといった疑問が湧いてきますし、なにより動物と仲良くなれるクレが全部解決してワンパターンになりそうです。
険しい自然についても、河も崖も沼も出していたのでネタ切れです。
マグマとか氷山を出したら、それは森なのかとツッコミたくなること間違いなし。
兵士に追いつかれるパターンもすでにいくつか書いていたので、これ以上追いつかれるのもどうなんだろうと筆が止まってしまいました。
そこで、「なんかネタない?」と作っちゃうおじさんに聞いてみました。
こういうときは人と会話するのが一番です。
こんなのどう?と作っちゃうおじさんから提案されたのがこちら。
・お母さんとなって誘惑する人面樹が出るイベント
・死んだはずの弟がゾンビとなって迎えに来るイベント
お、結構おもしろそう!
胸糞な、精神に来る系のイベントですね。
これまでの動物系、自然系、兵士系とはちょっと違う路線です。
ただひとつ懸念材料があって、エンディングの展開を考えると、ファンタジー路線(非現実路線)にはしたくなかったんですよね。
今回のゲームのエンディングは前々回の記事で書いたように、「魔法が使えるという噂の魔女に会いにいったけど、ただの人間だったので何も解決できない」という残酷な現実を突きつけるものでした。
ファンタジーな世界観にしちゃうと、その現実的なエンディングと相性が悪そうな気がしたんです。
とはいえ、今までのイベントは「キャラクターが物理的にダメージを受ける(体力が減少する)」ものだけだったのですが、「プレイヤーに精神的なゆさぶりをかける」という方向性はイベントのバリエーションが広がって面白いなと思ったのもたしかです。
謎の幻覚攻撃で操られるとか、背後でずっとささやく霊的な存在がついてくるとか、スライムにじわじわと溶かされるとか、見ていて嫌になるような、殺伐としたダークファンタジーなイベント、めっちゃ面白そう・・・!
だけど、現実的なエンディングとの兼ね合いが・・・!
こんな感じで1週間くらいめちゃくちゃ悩みました。
悩みぬいた末・・・、最終的にファンタジー路線を採用することにしました。
理由は簡単です。
欲望には勝てません・・・!
悩んで書けないくらいなら、書きたいものを書いたほうがいいよね!
普段、僕は自分の書いたもののツッコミどころを潰していくというスタイルで執筆することが多いのですが、ぶっちゃけツッコミどころがあったって面白ければいいとも思っています。
スターウォーズのジョージ・ルーカスも「宇宙で音が出るなんて科学的におかしい」とツッコまれた際、「俺の宇宙では音が出るんだよ!」と言ったとか言わないとか。つまりはそういうことです。
だから僕は決めました。
エンディングと矛盾しようが、胸糞ファンタジーを書くと。
もちろん胸糞なイベントを書くだけならファンタジーじゃなくてもいいんですが、今回は「子供たち同士は信頼し合っている」という設定で行くつもりだったので、仲間割れイベントなどが起こせなかったんですよね。
それならば人を化かしたり撹乱する存在がいたほうが、イベント数が稼ぎやすそうだと思ったのです。
現実的なエンディングとの兼ね合いに関しても、「少し不思議な生き物が森のなかにいる」くらいのファンタジー度にしておいて、基本的にはリアル寄りの世界観にしておけばギリギリ問題ないんじゃないかと判断しました。
イベントの設計
「良いよね→自分なら法」
創作意欲が刺激されたので、下記のような形で「精神をえぐるシチュエーション」をテーマにイベント案をリストアップすることにしました。
こういうアイディア出しのときに普段やってる以下のような方法がありまして、あえて命名するなら「良いよね→自分なら法」でしょうか。
1.脳内に入っている、映画やドラマなどの物語の心に来る「ああいうの、良いよね」と思うシーンを書き出す。
2.そのシーンに対する自分なりの「もっとこうだったら良いのに」「自分ならこう書きたい」というこだわりをメモしていく。
3.最後に、今書いている物語の設定と「こだわり」を掛け合わせて具体化する
たとえば・・・
ユニが死亡している場合、ユニの死体から記憶を盗んだ化け物が襲い掛かってくる。
化け物自身も自分がユニだと思い込んでいるので、子供たちのことを大切に思い、愛ゆえに食べようとしてくる。
人を騙して捕食する人面樹が出てくるイベント。人面樹の謎の幻覚に引っかかると、人面樹を自分の母親だと勘違いしてしまう。
リーダーキャラが正体を見破って攻撃すると、母親に会いたがっていたエイが人面樹を庇ってしまう。
子供たちに同情心を抱いている兵士が現れる。生存キャラクターによっては簡単に倒せてしまうが、倒さない選択肢を選ぶと薬をくれる。
うっかり倒しても兵士は何も語らない。
「お前のことは忘れない」と言いながら先に進むパターンのほうが好きだけど、とどめを刺したほうも後を追うパターンも良い。
せっかく助けてもらった命を無駄にするというもやもや感と、相手への心からの愛情が感じられる、絶妙な胸糞ハーモニー。
ギロチントラップが発動する家に侵入した際、ノノがとっさにリーダーを庇うが、その結果ノノが大怪我してしまうイベント。
即断即決しがちなシムがリーダーの場合は、ノノにとどめを刺して自分も後を追ってしまう。(モクの場合は魔女を倒すという使命を覚えているので無事)
犠牲者の悲鳴だけ聞こえて、カメラは生き残った人たちの表情を淡々と写してる、というのが良い。
兵士に追われる最中、滝に飛び込んだと見せかけて木に隠れるイベント。
ユニだけ木に登れず、囮となって兵士を引きつけることに。
遠くのほうで襲われるユニを、生存者たちがじっと見ているという展開に。
誰にも気づいてもらえないというパターンが良いけれども、今回みたいに仲間がすぐ近くにいる場合は、「先に行け」と助けを放棄するのも覚悟が決まってて良い。
リーダーが洞窟の穴に落下するイベント。
腕力のあるキャラクターなら落ちる前にギリギリ這い上がることができるが、そうでない場合は二度と脱出できない穴の底に無傷で落ちてしまうイベント。
さすがに可哀想だったのと、脱落者は死亡判定を出す必要があったので、子供たちは全員ナイフを持っている設定に変更。
リーダーは穴に落ちたあと、後で合流すると嘘をついてその場で自害する。
個人的には少し意識があるとさらに胸糞で良い。
あるいはギリギリ間に合う状況で必死に助けようとするんだけれども、じわじわと悪化していくパターンも嫌な気持ちになるので良い。
主にノノがスライムにひっそりと襲われるイベント。
消えたノノに気づかず進むと、手遅れになったノノの姿を発見する。
仲間が気付けた場合は助けようとするが、半液体のスライムを引き剥がすことができず、ノノの体力がじわじわと減っていく。
ゲームバランス的にノノが一番死亡率が低かったので、調整のためにノノ即死イベントを増やした意味合いも。
上記が一例です。
こんな感じで、心に残ってるシーンとかを参考に、胸糞の悪いイベントを組み立てていきました。
日頃から「こういうの、いいよね」みたいなシチュエーションとかシーンとか、「もっとこうならいいのに」と感じたことはメモしてストックしておいたのが役に立ちました。
さらにバリエーションを増やす
これだけでは30イベントに足りなかったので、下記のような別角度のイベントも検討しました。
1.これまでの展開を裏切るイベント
2.難易度低めの、ほぼ読み物としてのイベント
3.シナリオゲームの特性を活かすイベント
1.これまでの展開を裏切るイベント
今までのイベントから、「こういうときにはこうしておけば大丈夫だろう」と学んだプレイヤーの予想を裏切るタイプのイベントです。
たとえば動物が出てくるイベントは、動物と会話できるクレが出てくれば簡単にクリアできてしまいます。
そこで、クレは「哺乳類や鳥類以外とは会話できない」という設定に変更して、爬虫類などが出てきた場合は死亡するように変更しました。
また、「動物と会話ができたとしても、仲良くなれるとは限らないよね」ということで、会話した結果、悲惨な目に合うイベントも追加しました。
これ以外にも、「回復イベントは体力満タンならスルーしてOK」というほかの回復イベントとは異なるような、「ちゃんと回復しないと逆にダメージを受ける」といった展開になるイベントも作成しました。
このような展開を作ることで、慣れたころが一番危険といったようなプレイ体験を作ることを狙いました。
2.難易度低めの、ほぼ読み物としてのイベント
どの選択肢を選んでも比較的無事に済むような簡単なイベントです。
たとえばキャラクターの親しい人物がゾンビとなって現れることで、キャラクターの背景を描写するイベントだとか、特定のキャラがいれば選択肢を選ばずに自動的に解決してくれるようなイベントなどです。
なぜこのようなイベントを入れたかというと、ゲームの難易度が高すぎたためです。
実は、最初の設定では子供たちが6人全員そろった状態でスタートしてたんですね。
そうなるとどんなイベントでも、誰かしらが状況を打破できる能力を持っているため、比較的に楽にクリアできていたんです。
そこでもう少し難易度を上げたいなということで、最初は一人旅にして徐々に仲間が合流するというシステムに変更したのです。
仲間がランダムで加入すれば、一度体験したイベントもまた展開が変わって楽しくなるだろうという狙いもありました。
最初の一人もランダムにしようかと思ったのですが、オープニングを複数作るのも面倒だったので、運動音痴設定のユニが転んで仲間からはぐれてしまうという展開にして、ユニ一人旅状態で始めることにしました。
(タイトルが「僕たち」なのにユニが主人公っぽいのはどうなんだろうと思ったのですが、タイトルは仮ってことでとそのままにしていました)
すると今度は難易度が爆上がりしたんですね。
もともと6人全員揃った状態で、いかに死亡者を増やすかという思考でイベントを設計していたので、一人旅だとユニがすぐに死んでしまうのです。
ということで、ユニ一人旅でプレイヤーが離脱しないよう、このような低難度イベントを盛り込んだのでした。
また、「危険度」というパラメータを設定し、序盤では低難度イベントしか出ないようにするといった調整も行いました。
3.シナリオゲームの特性を活かすイベント(ラストバトル)
最初の設定では、ランダムで出てくるイベントを一定数クリアすればエンディングにいくという流れでした。
ただ、最後のイベントが簡単に解決できるものだった場合、そのままエンディングに行くのが物足りなく感じたんですね。
そこでどうせなら、最後のイベントはランダムではなく、達成感が得られるような長めの難関イベントを固定で出現させたいと思ったのです。
ラストを飾るイベントなので、せっかくなら「シナリオゲームの特性をフルに活かしたい」と思い、いろいろとアイディアを練っていきました。
シナリオゲームって、「長めの文章を読む→選択肢を選ぶ→長めの文章を読む」というのが基本的な進行ですよね。
とくに今回のゲームではこれが1イベントの基本単位となっています。
そこで、この要素を転換したら面白いのではと考えました。
たとえば、「短文 → 選択肢を選ぶ → 短文 → 選択肢を選ぶ → 短文 → ・・・」というような、1イベント中に何度も選択肢を出すスタイルです。
「敵が攻撃してきた!」 →「右によける/左によける」→「攻撃をかわした!」→「敵の連続攻撃!」→「右によける/左によける」→・・・
というような展開にすると、シナリオゲームなのにあたかもアクションゲームのような緊迫感が演出できそうです。
もちろん何度も選択肢がある分、間違えた場合のデメリットは少なめにしたり、生存したキャラクターによってダメージを回避できたりといった展開にして難易度を調整する必要があります。
また、シナリオゲームの特性である「異なる選択肢を選ぶことで、その後の内容が分岐する」の転換として「選択肢がすべて同じ内容」というのも使いたいなと思いました。
たとえば「どうする?」→「(選択肢)戦う/戦う/戦う」というような展開にすると、プレイヤーの思惑を超えた「登場人物の確固たる意思」を感じられたり、「判断する余裕もないほどの緊迫した事態」などが表現できそうです。
こちらは以前作った「石油王と遊びたい」のエンディングでも使った手法で、シナリオゲームならではの表現ということでお気に入りです。
上記のふたつの手法を取り入れて、エンディングへと繋がる最終決戦イベントを仕上げました。
ラスボスがぽっと出てくるのも味気ないので、ラスボスと事前に出会うような伏線イベントも追加しました。
このように手を変え品を変え、なんとか30イベントを作ることに成功・・・!
終わったときの達成感は忘れられません。
とはいえテストプレイをして誤字を修正したり、ゲームバランスを整えたりと細かい修正が山積みだったのですが、これでようやく一息つくことができました。
エンディング制作
当初の構想を振り返る
イベントもおおむね仕上がったので、いよいよエンディングの作成に取り掛かります。
当初のエンディングの構想は過去記事でもご紹介した通り、下記のようなものでした。
・子供たちは疫病に感染しており、元凶である魔女を倒せば治ると思っている
・魔女はただの人間(医者)だったので、殺しても治らない
・むしろ疫病を防ぐ薬を作っていた人を殺してしまったので、もう助かる見込みがない
・子供たちはみんな死んでしまうけど、最期まで子供たちは仲良くいられたから本人としてはハッピーという展開
どう考えてもハッピーじゃないぞ・・・怒
時間を掛けてせっかくプレイしてくれたのに、バッドエンドだとプレイヤーもがっかりしそうです。
個人的にもハッピーエンドが好きですし。
とはいえ、シビアな世界観のゲームなので安直にハッピーにするのもそれはそれで微妙そうです。
そこで折衷案です。
僕はこういうサバイバル要素のあるゲームって、つい全員生存するよう頑張りたくなるんですよね。
そこで、全員生存クリアができたときのみハッピーエンドが見られるということにして、誰かが死亡していた場合はほろ苦いエンドというマルチエンド方式にすることにしました。
ハッピーエンドの骨格を考える
以前もちょろっと触れましたが、最初は薬の詳しいユニとか、未来のある一番年少のエイが、魔女の薬づくりの後を継ぐみたいな展開にすれば、ハッピーな感じにはなりそうだなとはぼんやり考えていました。
難易度的にも、
ユニ → リーダー(年長)キャラはイベントでの死亡確率が高い※ので、生き残りにくい。
※イベントで必ず生存していると確定しているのはリーダーキャラだけなので、イベントでのダメージ判定は「リーダー」か「全員」になるものが多いことが理由。
エイ → 体力が一番低いため、生き残りにくい。
という特徴があったので、ハッピーエンド条件としてどちらかの生存をキーにするのは良さそうだとは常々思っていました。
そして、今回は全員生存させたときのみハッピーエンドにすると決めたので、両方とも生き残っていることが前提になっています。
それならばということで、薬づくりの後を引き継ぐという展開にもより納得感が出る、薬に詳しいユニをメインにエンディングを組み立てることにしました。
それに、難易度調整のためにユニ一人旅状態からスタートすることにもなったので、ユニが主人公っぽい感じで一貫性が生まれます。
ということでハッピーエンドは「全員生存していることで、なんやかんやで魔女から薬を引き継いだユニが、みんなを救って無事解決」という骨格にすることに決めました。
それに対応する形で、バッドエンドに関しては「誰かがいないせいで、薬を作ってる魔女が死んでしまい、結局全員死亡してしまう」という当初の構想通りの展開にしていきます。
ハッピーエンドの中身を具体化していく
骨格が整ったので、あとはこの流れが成立するようなロジックを考えていきます。
全員生存していることがハッピーエンド条件かつ、魔女が死んでしまうことがバッドエンド条件なので、「子供たち6人が全員生存している場合、それぞれの特性を活かすことで、魔女が死んでしまう状況を回避できる」という展開が物語として綺麗です。
また、このゲームの「子供たちが兵士に追われながら、魔女を倒すために森を進む」という設定を考えると、エンディングの流れは大きく下記のような進行になるはずです。
「子供たちが魔女を暗殺しようとする」 → 「子供たちを追ってきた兵士と魔女が出会う」
ということで、バッドエンドの場合は「魔女の暗殺に成功してしまう」もしくは「暗殺に失敗しても、その後兵士に殺されてしまう」といった展開が考えられます。
この2つのパターンと子供たちの特性を掛け合わせて、魔女が生存できる状況を検討していきます。
以前の記事でも紹介した「嘘の上塗り法」で、下記のような思考の流れで中身を詰めていきました。
どうしたら暗殺が失敗するか?
→ユニだけ運動音痴設定があるのでそれを利用しよう
→ユニがリーダーの場合だけ、すっころんで暗殺が失敗してしまうという展開なら自然
→オープニングでユニはすっころんで仲間からはぐれるシーンがあり、エンディングを見るため何度もリプレイしているプレイヤーには納得感があるはず
→バッドエンドでは、一度すっころんだあと、誰かが死亡しているために使命感から再びすぐに襲い掛かって暗殺成功という流れにしよう
→全員生きている場合は、無抵抗な魔女を殺すためらいのほうが勝って、まごまごしているうちに兵士がやってくるという展開にしよう
暗殺失敗後の流れ
キャラクター設定表を見てしばし検討・・・
→魔女は黒猫を飼ってそうなので、暗殺失敗してまごまごしている間にクレがその猫から事情を聞いて誤解が解けるという展開にしよう
→そのあと耳の良いエイが兵士の来襲に気づいて、パワーキャラのモクが扉を閉めて侵入を防ぐという役割にしよう
→ノノの運動神経良い設定の活用法がすぐに思いつかない・・・。「誰かの遺産」イベントみたいに兵士の攻撃をかばうような形にしよう
→シムは追ってくる兵士を倒す役割にしよう
→これで魔女を含めた全員生存ハッピーエンドの流れができる
→このままだとユニが転んだだけなので可哀想。魔女と共同で薬を作る流れにして、最後を締めてほしい。
→でも魔女のほうが薬に詳しいのだから、別にユニは必要なさそう
→ユニだけ感染していないことにして、抗体があるということでユニが重要的な立ち位置にしよう
→ユニだけ感染していない理由をどうするか?
→魔女と実は親子設定にして、小さいころにワクチン打ってもらったという設定にしよう
→ユニが薬の知識があることの裏付けにもなる
→ちょうど魔女は迫害されていた設定なので、娘を巻き込まないように離れていたという設定なら矛盾なくまとまる。オープニングでも伏線を張っておこう
→しまった。ユニとシムは姉弟設定なので、これだと魔女がシムの母親にもなるので展開が面倒
→ユニとシムは、いとこって設定に変更しよう。シムはあんまり魔女と接点なかったということで
→これで暗殺失敗~誤解が解ける~みんなで兵士撃退~親子の再会~薬開発~全員生存というエンドができる
→この流れで、「死にゆく者のレクイエム」という物語のテーマを見せていこう
バッドエンドの進行
→生存メンバーに合わせてハッピーエンドの流れをある程度追うけれども、誰かがいないせいで暗殺成功しちゃったり、兵士に殺されるような展開にしよう
→エイがいないせいで兵士の来襲に気づかないとか、シムがいないので兵士が倒せないとか
→ただ、バッドエンドが長すぎるのも周回プレイだとだるそう
→ある程度バッドエンドは共通にして短くしたい
→暗殺成功したあと、病気が進行して全員倒れるという展開にしよう
→そのあと兵士が来て火葬してエンド。ついでに兵士の人の良さが少し出るようなセリフを出そう
→まずい。ユニだけ感染していない設定を作ってしまったので、ユニは病気で倒れないはず
→ユニはナイフで手首を切って、仲間たちの後を追うという流れでいこう
→でもせっかく6人もいるのに、共通のバッドエンドで終わるのがちょっともったいない
→リーダーキャラに合わせて、ちょっとだけリーダーをメインにした演出を入れよう
→三途の河みたいな場所で、他の仲間たちと会話して、最後にリーダーキャラが一番会いたいと思っているキャラが迎えに来てくれるという展開にしよう
→クレとエイの最後に迎えてくれるキャラが思いつかないので、二人は兄妹設定にして、お互いが迎えに来る展開にしてしまえ
→ユニも誰にするか思いつかない
→感染していない設定あるので、まだ死んでないってことで子供たちは来ないことにしよう
→それにちょうど魔女を親子設定にしたから、現実の魔女が現れることにしよう
→そのまま瀕死の魔女に助けられて、薬づくりを引き継ぐという展開にしよう
→もう少しバッド感を出したい
→火の鳥の八尾比丘尼みたいな「因果が巡って自分自身に殺される」といった展開が好きなので、薬を引き継いだ後は別の子供たちに暗殺される的なエンドにしよう。パズルRPGでも評判良かったし。
動きをパワポで説明
上記のような思考の流れでエンディングの進行を整えていきました。
あとは具体的にゲーム画面に落とし込む作業に入ります。
イベントパートのようにテキストオンリーで作成する手もあったのですが、せっかくキャラクターの画像があるので、RPGのようにキャラクターを動かしてエンディングを作成することにしました。
手間は掛かるのですが、やはり動きがあったほうがわかりやすいですし、ここまでの集大成といった感じが出てプレイヤーの満足度も上がると思ったのです。
自分の頭の中にあるエンディングを、どうやってプログラム担当の作っちゃうおじさんに伝えるか悩んだのですが、結局パワポを使って作成しました。
本当にほかの人はどうやってるんだろうか・・・。ここは今後の研究課題です。
エンディングパワポは数えたら全部で137スライドあったので、一部だけ抜粋します。
右側余白のキャラクター画像は、素材をすぐに使えるように適当に配置してたものなので特に意味はありません。
(パワポの図 一部抜粋)
図のように、キャラクターの動きを矢印、細かい指示などをサイドに書いて表現していきました。
これをどうやって作っちゃうおじさんがゲームに落とし込んでいるかは謎です。
ちょっと聞いたところによると、画面上に座標を指定して動かしてるとかなんとか。
よくわからないけれども、とても面倒そうなことはよく伝わってきました笑
リーダーキャラごとにエンディングを変えると言ったら発狂していましたが、あえて気づかないふりをしました。
かなり忠実にパワポを再現してくれた神業に感謝・・・!
テストプレイの反応
こうしてようやく、イベントもエンディングもすべて完了しました。
そこでテストプレイを周囲の人にお願いしました。
果たして面白いと思ってもらえるのか・・・!?
ドキドキの瞬間です。
結果としては・・・
難しすぎ!!!
という声がほとんどでした。
実はこの反応、全く予想してませんでした・・・
自分としては「簡単すぎ!すぐクリアしちゃった」みたいなことを言われることにびくびくしていたのです。
なぜそう思っていたかというと・・・
シナリオを作った僕は、どのイベントでどんな状況のとき、どんな選択肢を選べばいいか、当たり前ながら全てを理解しています。
なおかつ「30イベント」 × 「子供たち6人の全生存パターン(2の6乗 – 1(全員死亡パターン除く))」 × 「全選択肢(2~3つ)」を3~4回はテキストチェックのためにプレイしていたので、累計で約17,000イベントくらいテストプレイをしていたことになります。(体力によって死亡するかしないかをテストした分を含めるとたぶんもっと多い)
1周が30イベントなので、500周分くらいはしている換算です。
そうです。
僕は気づかないうちに、廃人プレイヤー(僕)基準で難易度を考えていたのです!
完全に自分の感覚がバグっていました。
いつの間にか、極めた人たちがさらなる高みを競う、パリコレとか達人の書道みたいな難易度になっていたようです。
作っちゃうおじさんにも難しいかどうか聞いてみたら、「最初のステージで大体死ぬからクリアできない」とのこと。マジか。
これはマズイということで、即死イベントを減らしたり、ダメージ量を減らしたりと、イベントの難易度調整をする作業に入っていきました。
また、「そもそもテキスト読みたくない。だるい」という意見も7割くらいありました。
この意見については、申し訳なかったのですが完全スルーすることにしました。
なぜかというと・・・
テストプレイをお願いしたのは声を掛けやすかった周囲の人たちです。
つまりゲームの嗜好などは完全無視した人選です。
本公開の場合は、テキストを読みたくない人は「シナリオゲーム」自体をそもそもプレイしないはずです。
そんなターゲット外の人に合わせて修正してしまうと、ターゲットである「シナリオゲーム好き」の人たちからしたら魅力が下がってしまうことになりかねません。
ホラーゲームで「怖いからホラー要素減らしてくれ」とか、乙女ゲームで「男と恋愛したくないから女の子出して」とか言われるようなものです。
とはいえ、「本質的にテキスト読みたくない」という話ではなく、「テキストは読みたいけど、周回プレイで同じものを何度も読むのは面倒」といったようなターゲット寄りの意見に関しては、テキスト差分スキップ機能などを作っちゃうおじさんに実装してもらって対応していきました。
それと嬉しいことに、残りの3割くらいの人たちからは「難しいけどめちゃくちゃ面白い!」との声を頂きました。
この声をもらって、ようやく一安心することができました。
この3割のターゲットとなる人たちの意見を参考に、テキストだけでなく、効果音やUIなどのブラッシュアップを進めていきました。
そして公開へ
テストプレイで指摘のあった部分を修正し、ゲーム難易度もぐっと下げ、さらにはHP上に簡単なプレイガイドも記載し、2022年2月に本公開することができました!
ずっと構想で終わっていたものが、やっと形にできてうれしかったですね。
公開後、誰もプレイしてくれなかったらどうしようと不安でしたが、「面白い!」「こういうの好き」といったコメントが届いて、思わずガッツポーズを取りました。
この瞬間のために作ってきたといっても過言じゃないです。製作者冥利につきます。
遊んでくれた人には本当に感謝の気持ちでいっぱいです!
また、公開後もより良いゲームになるよう、届いた要望などはなるべくすぐに対応するようにしていきました。
誤字脱字とか、ちょっとしたバグなど、公開後にもやることが結構山積みでした笑 反省です。
とくに「難易度が高い!」という意見は本公開後も続出したので、noteで攻略ガイドを作ってフォローすることにしました。
この攻略ガイドは実験的に「基本的な攻略方針を書いた無料記事」&「選択肢分岐やパラメータ変動が記載された有料のデータ集」というセットで掲載することにしました。
なぜ有料のデータ集を用意したかというと、実は制作している過程で、「画像素材や音楽素材を買う金がない!」ということで、泣く泣くあきらめた箇所がいくつかあったんですね。
そこで、今後のゲーム制作を見据えて寄付を募ろうという話になったんです。
そして、どうせなら寄付してくれた人への返礼品を用意したいということで、攻略に役立つデータ集を用意することを思いついたのです。
本当はキャラクターのイラストとかのほうが良かったんだろうと思うのですが、そもそもイラスト描ける人にお願いする費用がないという笑
こういった運営体制についても今後の課題点といえますね。
終わりに
ということで、「逃げ森をベースに、自分がどのようにゲームシナリオを作っていったかを言語化しよう!」というシリーズはこれにて完結です。
記事を書いたことで、今まで無意識にやっていた部分を振り返ることができ、自分はこうやって書いていたんだなといろんな気づきが得られました。
今回の連載は時系列順に、悩んだ過程をわりとありのまま書いていったので、もう少し体系化した記事を今後書いていきたいです。
また、どうすればもっとプレイヤーのみなさんに喜んでもらえるか、まだまだ研究が必要だなと痛感したので、今後も試行錯誤を続けていくつもりです。
ここまで読んでいただきありがとうございました!
「逃げる僕たちと暗黒の森」、引き続きどうぞよろしくお願いします!