シナリオの作り方を模索したい!ダークなアドベンチャーゲームのシナリオを制作するにあたって考えたこと① 〜逃げる僕たちと暗黒の森〜

はじめに

この記事は、ダークなアドベンチャーゲーム「逃げる僕たちと暗黒の森」を題材に、僕(中野 藤右衛門)がどういう過程を経てシナリオ作成したのかをまとめたものです。

自分用の備忘録という側面が強い記事ですが、ゲームに限らず何かのシナリオ執筆にチャレンジしたい!という人には参考になるかもしれません。

なお、記事中にはゲームのネタバレがだいぶ含まれてますので、未プレイの場合、まずは「逃げる僕たちと暗黒の森」を遊んでもらえると嬉しいです。(無料のブラウザゲームです)

この記事を書こうと思ったきっかけ

下記のnote記事でも書いたのですが、僕は「安定的にシナリオを書くために、自分がシナリオを生み出す仕組みをシステム化したい」という願望があります。

なんとなく本能的に書いているとスランプに陥ったりするので、自分が調子良く書ける状態を常に再現できるようにしたいのです。

そのためにも、自分がどのようにシナリオを書いているか?ということをなるべく言語化して残しておきたいんですね。

それに、すごいクリエーターさんが日常のトレーニングとして「なぜ自分がそう感じたのかを、きちんと言語化する」ということを推奨していたので、これは良い機会だなと記事を書くことにしたのです。

それではなるべく時系列に沿って、自分がどう考えてシナリオ作成に至ったのかをまとめていきたいと思います。

「逃げる僕たちと暗黒の森」の最初の依頼内容

ゲーム「逃げる僕たちと暗黒の森」のシナリオを書いてくれと作っちゃうおじさん(@hothukurou)に依頼されたのは2018年の6月でした。

依頼内容をまとめると・・・

  • リソース管理型のゲームが作りたい。
  • 選択肢で分岐させるタイプのシナリオゲーにしたい。

というものでした。

リソース管理型のゲームとは、体力だとかお金だとか、ゲーム上に現れるパラメータをうまくやりくりして進めていくようなタイプのゲームです。

その当時の僕は「リソース管理型のシナリオゲーム」というものにあまりぴんと来ていませんでした。

そこで、「例えばどんなゲームが近いイメージなのか」と作っちゃうおじさん(@hothukurou)に尋ねると、下記のゲームを紹介されました。

「Reigns」

https://app-liv.jp/3471280/

やはり事前にイメージを共有するのは大切ですね。

なんとなく、作っちゃうおじさん(@hothukurou)がどういうゲームを作りたがっているのかが見えてきました。

とはいえこの時点ではまだゲーム性はそれほど固まっておらず、シナリオ&選択肢があることは確定で、あとは作りながらまとめていくという話になりました。

さらにシナリオと世界観の原型もあるとのことで、下記のテキストがLINEで送られてきました。

 あの時、こうしていれば、アイツは 死ななかったんだ・・・。

6人の子供が夜の森を走っている。
後ろからは追手が来ている。
元々住んでいた町は襲撃にあって燃やされている。
子供たちは森の奥にいる魔女のところにいけば、この事態を救ってくれると思っている。 

 馬に乗った追手が殺しに来る。
何人かキャラを選ぶと、ここは俺に任せろと、立ち止まってくれる。

 時間稼ぎができるので、残りの子供は走り続ける。

魔女の家に着く。中に入ると、魔女がいる。
 「どうしたんだい?」
「まあ、お座り。」
 魔女が水晶玉を見せてくれる。中には、燃え盛る故郷、殺される親、
そして、追手に無残にも殺された子供たち・・・。

ああ、あの時、もしこうしていれば、こんなことにならなかったんじゃないか・・・。

魔女の家に到着したキャラによってエンディングが変わる。

ラストのエンディングは、2つ。
全員死んでいなくて、町もすべて元の状態の夢の世界で幸せに過ごすか、
現実を受け入れて、一人でも生きていくか。

つまり、シナリオの設定としては

  • 6人の子供たちが逃げている
  • 魔女のところに行く
  • 子供たちの何人かは囮になって死ぬ
  • 最後の選択肢でエンディングが分岐。どちらを選んでも、ビターな感じで終わる

というものでした。

(かわいそすぎるだろ・・・と当時思った記憶 笑)

作っちゃうおじさん(@hothukurou)はどうも「最後に突きつける究極の2択」とか、「他人から見たら不幸だけど、本人が幸せならそれでいいよね!」っていうエンドが好きみたいです。(いわゆるメリーバッドエンド

今回もその路線で行くということで、ここからシナリオを膨らませていきます。

依頼の解釈と再構築

まず最初に考えたことは「ゲームとして面白くなるにはどうすればいいか」というものでした。

個人的に「ゲームシナリオ」は「ゲームを面白くさせるための引き立て役」と考えています。

シナリオやイラストなどがいくら良くても、肝心のゲーム性がつまらなかったら「これ小説でいいじゃん」とか「これイラスト集でいいじゃん」みたいなことを言われてしまいますよね。

なので、僕はまず「ゲームだからこそ良い」と思われるような「根幹としてのゲーム性」をしっかり定めて、それをサポートさせる形でシナリオを書くのがいいんじゃないかと思っています。

他のメディアにはない「ゲーム」独自の魅力ってなんだろうって考えると、それは「世界に能動的に関与する楽しさ」な気がします。

ということで、「プレイヤーはこのゲームにどう関与するのか?」を最初に整理しました。

依頼内容から、このゲームの「根幹のゲーム性」は「何かのリソース(体力など)をうまくやりくりしながら、どの選択肢を選ぶべきかジャッジする」というものですね。

さらに細かいゲーム性を作っちゃうおじさん(@hothukurou)と話し合いながら整理していくと下記のようなものとなりました。

  • 目的は、「魔女」のもとにたどり着くこと
  • 登場人物は、6人の子供たち
  • 敵として、馬に乗った追手がいる
  • 馬に乗った追手の攻撃でダメージを負う(リソース:体力)
  • 囮になる子供を選択肢で選ぶ
  • 追手がどれだけ子供たちに近づいているかの度合いを示すパラメーターを入れる。(リソース:追いつかれ度)
  • 無事に逃げ切れるような選択肢を選ぶ
  • エンディングは究極の2択で分岐する(残る子供は一人)

ここで僕が疑問に思ったのは、「追いつかれ度」「馬に乗った追手の攻撃でダメージを負う」という部分でした。

馬に乗った追手の攻撃を受けるような時点で、子供たちはすでに追いつかれているわけです。

それって、かなり絶体絶命な状況なような気がしますよね。

それが何度も発生するイベントだとすると、結構違和感があるんじゃないかなと思いました。

そう考えると、ゲーム的には「追いつかれ度」がMAXになったら、ゲームオーバーになるほうがシンプルです。

追いつかれたら囮になる子供を選択肢してリセットという方法もありますが、そんなことを4〜5回も繰り返していたら追手が無能っぽくなります。

ということで、

  • 魔女のもとへ向かう過程で危険な動物たちなどに出会ってダメージを負う
  • 追手は基本的にはあまり出てこない。出てきても、子供たちでなんとか対処できるよう単独行動 or 少人数
  • 追手の集団に追いつかれたら、ゲームオーバー

というゲーム性に修正することになりました。

また、6人もの子供たちが出てくる都合上、うっかりすると誰が誰だかわからなくなりそうだなと思ったので、

  • 子供たちはそれぞれ特殊技能を持っていて、それをうまく使うと困難な選択肢を乗り越えられる
  • 体力ゲージが減ったら、年長者や力持ちキャラが背負ってあげることで体力が回復できる

というゲーム性を提案しました。

ゲームをするなかで「このキャラはこの特技が使える!」「このキャラはこのキャラより年上」などとプレイヤーが楽しみながらキャラクターを覚えられるんじゃないかと思ったのです。

次に確認したのは、ゲーム画面です。

このゲームはシナリオゲームですが、どんな形式でシナリオを表示するのかを確認することにしました。

シナリオゲームといってもいろいろありますよね。

キャラクター同士の会話で物語を進めていくタイプや、普通の小説のように文章を載せるタイプなど。

どちらのタイプかによってだいぶ書き方が変わってきますので、ここの確認は重要でした。

今回は「6人ものキャラクターの絵を依頼する金がない」ということで、タイプ②の文章メインなタイプということになりました。

図の文字量を見てわかるように、タイプ②のほうがシナリオライターは大変です笑

(素材を買うお金に毎回困ってるので、こちらの攻略ガイドなどを購入して支援してもらえると嬉しいです!)

また、完全ノベルでいくか、何か個別のゲームを挟むかも重要な点です。

以前作ったホラーゲームの「アカズノハコ」は、「箱入り娘」というパズルを解くというゲーム性を飽きさせない工夫として、エピソード挿入という形でシナリオを表示していました。

今回は主に文章を読んで選択肢を選ぶという形式だったので、「かまいたちの夜」のようにひとつの物語として成立するような完全ノベルタイプでいくか、あるいはゲームブックのようにひとつのイベントが発生して、それに対処するとまた別のイベントが発生するといった形式が考えられました。

完全ノベルタイプだとかなり工数が掛かってしまうことと、「そもそも長い文章読むゲームやりたい人あんまいないんじゃね?」と思ったので、ゲームブック風のほうがまだいいんじゃないかと思いました。

それに小学生くらいのときに「にゃんたんのゲームブック」にどハマりしてた時期があったので、「ゲームブックいつか作りてえ」と常々機会を狙っていたこともあります。

参考:「にゃんたんのゲームブック」

https://www.poplar.co.jp/book/search/result/archive/5250089.html

ここらへんのゲーム性は、一旦シナリオの素案を用意してみて、やりやすいほうで進めようということになりました。

シナリオ方向性固め~嘘の上塗り法

ゲーム性が大まかに決まったので、シナリオの方向性を固めることにしました。

個人的にいつも最初に取り組んでいる方法としては・・・

①: 描きたいシーンや物語を動かすうえで必要なシーンを決める

②: そのシーンに至るためにはどのような展開が必要なのかを考える

③: ①②の過程で疑問に思ったことやツッコミどころをひとつずつ潰す

というものです。

これってたぶん「嘘をつく」ときに日常的にやっていることだと思います。

たとえば、寝坊してパジャマ姿のまま出社したとします。

会社の上司はかなり怒っています。

はたしてどう言い訳すればいいでしょうか。

描きたいシーン = 伝えたい嘘(フィクション)は「電車の遅延で不可抗力で遅れたのです」としましょう。

不可抗力ということを伝えるためには、「きちんと朝起きて時間通りに出社したのです」というようなエピソードが必要になりますね。

加えて、「電車が2時間も遅延したのです」みたいな「数分の遅れじゃなかった」ということを説明するエピソードも必要になります。

それからツッコミどころを探していきます。

たとえば・・・

  • 電車が2時間も遅延したらニュースになって、遅延してないことがバレる!
  • 慌てたせいでスーツじゃなくてパジャマで出社したことをごまかせない!

とか。

このツッコミどころをひとつずつ潰していきます。

・電車じゃなくてバスにすればなんとかごまかせるんじゃないか?

  →バスでもバレるか。それならど田舎のニュースにもならないようなバスならどうだ?

  →なんでそんなバスに乗ったのか意味不明だな。よし、昨日はど田舎に泊まったことにしよう。

  →ど田舎に泊まった理由が必要だな。田舎のおばあちゃんちの誕生日祝いとでもしておこう。

・きちんと朝起きてたらパジャマじゃないよな

  →きちんと朝起きて、スーツに着替えたのにパジャマになる理由を考えよう

  →そうだ。途中でスーツが汚れてしかたなくパジャマに着替えたことにしよう

  →田舎の泥道で汚れたのでしかたなくパジャマに着替えた、そしてスーツは捨てたことにしよう。

この過程を経て「朝きちんと時間通りに出社したのに、電車の遅延で遅れたのです」という嘘が・・・

「昨日田舎のおばあちゃんちで誕生日パーティをしました。遠方地だったので、本日かなり早起きして間に合うように出社したものの、ど田舎のバスなので予定より2時間も遅れてしまいました。さらには泥をはねられてスーツが汚れてしまったので、泣く泣くパジャマで出社したのです」

というひとつの物語となりました。

「嘘の上塗り法」とでも命名しときましょうか。

こうすることで、「描きたいシーン/必要なシーン」があれば、わりとロジカルに物語を作ることができます。

物語もひとつの嘘(フィクション)なので、普段の嘘のつき方がそのまま役に立つわけですね。

さて、今回のお題を再掲すると・・・

 あの時、こうしていれば、アイツは 死ななかったんだ・・・。

6人の子供が夜の森を走っている。
後ろからは追手が来ている。
元々住んでいた町は襲撃にあって燃やされている。
子供たちは森の奥にいる魔女のところにいけば、この事態を救ってくれると思っている。 

 馬に乗った追手が殺しに来る。
何人かキャラを選ぶと、ここは俺に任せろと、立ち止まってくれる。

 時間稼ぎができるので、残りの子供は走り続ける。

魔女の家に着く。中に入ると、魔女がいる。
 「どうしたんだい?」
「まあ、お座り。」
 魔女が水晶玉を見せてくれる。中には、燃え盛る故郷、殺される親、
そして、追手に無残にも殺された子供たち・・・。

ああ、あの時、もしこうしていれば、こんなことにならなかったんじゃないか・・・。

魔女の家に到着したキャラによってエンディングが変わる。

ラストのエンディングは、2つ。
全員死んでいなくて、町もすべて元の状態の夢の世界で幸せに過ごすか、
現実を受け入れて、一人でも生きていくか。

これが「描きたいシーン」すなわち「つきたい嘘」になるわけです。

このシーンに至るにはどんな状況や理由、エピソードが必要かを整理していきます。

・町が燃やされて子供たちが追われるエピソード

  →何か巨大な秘密を知ってしまったとかかな?

・子供たちが囮になる理由

  →とても仲が良い子供たちで、年長者は自分が守らないとって思っている?あるいは一人でも生き残れればいい?

・魔女が何者かを示すエピソード & 子供たちが魔女のもとを目指す理由

  →魔法が使える世界観で、催眠術的なものが使える?

  → 困った時に助けてくれる的なことを子供たちは事前に知っていた?

こんな感じでお題のシーンにつながるために必要な要素を上げ出していきます。

こういった要素を説得力のあるものにするために、あとはツッコミどころをひとつずつ潰して嘘を上塗りしていけばいいのですが・・・

正直このお題は人から依頼されたものなので、別に自分にとっての書きたいシーンではないわけです。

それだと書いてても楽しくないですし、なかなか調子が出ません。

それに依頼されたからには、依頼した人の期待値を超えるようなアウトプットを出すべきだというのが個人的なモットーなので、「このお題から連想できる、自分の書きたいこと」を組み合わせて、物語に厚みを出そうと思いました。

シナリオ方向性固め~書きたいものと無理やりくっつける

ちょうど依頼されたころ、「魔女狩り」に関するエピソードをwikipediaか何かで読んでいたんですよね。

https://ja.wikipedia.org/wiki/魔女狩り

疫病とかが発生して社会不安が高まると、人間は誰かを悪にして弾圧するんだなあとか、お医者さんが人を治すために意見交換とかをしてたのが「魔女の集会」として迫害されたのって皮肉だよね、みたいなことが心の琴線に引っかかっていたのです。

現代から見れば、魔女狩りなんてかなり馬鹿げたことをしているようにも見えますけど、そう思えるのってこういう過去の積み重ねがあったからこそで、たぶん自分が当時の人々だったら同じように「魔女なら弾圧して当たり前」とか思ってたのかもなあとか、いろいろと過去に思いを馳せました。

魔女を弾圧している人も「正義」だと思ってやっていたわけですし、魔女とされたお医者さんも「正義」と思って行動していたわけです。

その正義がかち合ってしまったことで悲劇が起きてしまったものの、その悲劇は学びとなって、現代を生きる我々は「なんでそんな馬鹿げたことをしたのだろう」と不思議に感じるくらい進歩できたのです。

それならば、現在を生きる我々がやっている「馬鹿げたこと」による悲劇も、きっと未来の糧に繋がるんじゃないか。そうであるならば、悲劇に巻き込まれた人の救いになるんじゃないか。

こんなことをぼんやりと思っていたときに、作っちゃうおじさん(@hothukurou)から「魔女」が出てくるお題が来たので、「これは入れ込むしかないだろう!」とテンションが上がった記憶があります。

ということで、この個人的テーマに基づいて、「嘘の上塗り法」を実施していきました。

・町が燃やされて子供たちが追われるエピソード

  →町で疫病が大発生。感染が広まらないよう、感染者は一人残らず殺せと言われた兵士が子供たちを殺しにくるっていう設定にしよう。

・子供たちが囮になる理由

  →「とても仲が良い子供たちで、年長者は自分が守らないとって思っている」という設定で決定。

  →シビアな世界観と対比させる形で「思いやり」という愛を書いていこう。

・魔女が何者かを示すエピソード

  →魔女はただの人間で、お医者さんという設定にしよう。

  → なんのお医者さん? 物語と親和性があるように、疫病の研究をしていたということにしよう。

  →なんで森の奥にいる? 異端者だと迫害されて逃げていたことにしよう。

  →なんで迫害された? 当時でいえば最先端な、特殊な治療をしていたって感じかな。

  →治すために努力していたため疫病を抑えられていたのに、迫害されて町を追われたことで治す人がいなくなり、疫病が大流行。結果的に立ち去ったときに疫病を撒き散らしたかのように思われたって設定にしようかな。

・子供たちが魔女を目指す理由

  →町の噂でこんなときは魔女に会えばいいと言われていたとか。

  →魔女と会うのはエンディングなので、どんでん返し的な要素を入れたいな。

  →魔女 = 悪 だと思っていたら、魔女は良い人だった!というオチにすれば個人的なテーマにも合致するな。

  →魔女が疫病を流しており、魔女を始末すれば全ての病気は治るという噂が広まっていたということにしよう。

  →なぜ今まで魔女のところに行かなかった?

  →あまりに危険過ぎるので、命を狙われているくらいの理由がないと行かないような森という設定にすればゲームとマッチするか。

・エンディングをどうする?

  →ただの人間なので、水晶玉を見せるとかは無しで。むしろ魔法でなんとかできそうな希望を、現実の非情さで打ち砕く方がシビアな世界観と合ってるかな。

  →治療のために努力していた人を無知ゆえに殺してしまい、子供たちはみんな死んでしまうけど、最期まで子供たちは仲良くいられたから本人としてはハッピーという展開なら、作っちゃうおじさんのOKも出るかな?

  →ゲーマーとしては、「苦労してクリアしたんだから、ハッピーなエンドが見たい」って人が多いだろうから、薬に詳しいキャラが後を継ぐとかでハッピーなエンドを用意しよう。個人的にもハッピーエンドが好きだし。

と、このような形でシナリオの大筋を固めていきました。

シナリオのテーマとしては、前述した「正義がかち合うことで生まれた悲劇は、未来の糧となって救いとなる」というものに設定しました。

シンプルに言えば、「死んで、学んで、進んでいく」ということですかね。

こういうのはわかりやすいキャッチフレーズを自分の中でつけておくと、書いてる途中でも思い出しやすいという経験則があったので、「死にゆく者のレクイエム」という言葉を考えました。

物語の構図の縮約となるよう、それぞれの単語にこんなニュアンスを込めました。

ーーー

「死にゆく者」

  →死の淵にいる人(追われている子供、たぶん感染した町に入ったせいで自らも感染した兵士、処刑対象の魔女)

  →つまりはまだ死んでいない人=「今を必死で生きる人々」=「登場人物と我々(プレイヤー)」

「レクイエム」

  →魂のなぐさめの歌 = かち合った正義が起こした悲劇は未来の糧となり、救いとなる

    →かち合った正義とは?

     →無知ゆえに善良な医者を殺そうとする、仲間思いの子供たち
     →疫病を広めないために、疫病が蔓延する場所に足を運んで町を燃やし、さらには殺したくもない子供を殺す使命を持った兵士
     →疫病を広めないために、当時の常識では到底受け入れられないような、異常な独自の治療方法を開発する医師

「の」

  →of the people , by the people , for the people 的なニュアンスで、死にゆく者の、死にゆく者による、死にゆく者のためのレクエイムという感じで。

ーーー

このフレーズをタイトルにしようかなとも思ったのですが、わかりにくいだろうなということで、この文字をいじって登場人物の名前にすることに決めました。

「エ」から逆に読むと良い感じに人名っぽくなったので、子供たちの名前は「エイ、クレ、ノノ、モク、ユニ、シム」とすることにしました。

こういう言葉遊びを仕込んでおくと楽しいですよね。

(誰も気づかないだろうと思ってたら、公開後速攻で指摘するコメントがあって驚きました笑)

このようにして、大体依頼から10日くらいでゲーム性とシナリオの大筋を決めることができました。

ちょっと長くなってしまったので、今回はここまで。

次回の記事では、具体的な執筆の話を振り返っていきたいと思います。

記事を読んで「逃げる僕たちと暗黒の森」にまた興味が出てきましたら、再プレイしてもらえるとめちゃくちゃ嬉しいです。

(続く)

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